――入社の経緯は?
私たちの時代は、今と違って就職の情報は少なかったです。私の場合は、研究室の教授が根上工業の専務(当時)と懇意にしていて、研究室で話をする機会があったんです。
「うちは中小企業だけど、どこにもできない、こんなことをやっている」と聞いて、思うところがありました。
「中小企業のほうが、目立つぞ!」と。
――「目立つ」?
私、生来の目立ちたがり屋で(笑)。
大企業で歯車の一部となって、組織に埋没して働くより、小さな会社で目立つ。「あいつはすごい!」と言われる働き方をする。
これだ、と。
――実際入社してどうですか?
研究開発職として入社し、一貫して製品開発に携わってきました。いくつかのヒット製品も開発することができました。
そんな私の原動力となっているのが、この会社の伸び伸び成長出来る自由な社風です。例えば、「全員に社長になるチャンスがある」というのは面白いと思いませんか?
――社長になれる?
当然相応しくなければなれませんが、なれないと決まっているわけじゃない。
創業者から数えて現在の社長で5代目ですが、全員血縁関係はありません。
新入社員の頃、「社長を目指していい会社って、なんか面白い!」と漠然と感じていたのが懐かしいです。インパクトがありましたね(笑)
――研究開発のテーマは?
私がやってきたことの一つに、ART RESIN(ウレタン樹脂)の用途開発があります。
ウレタン樹脂は広範な機能化が出来る材料で、その特徴を活かしてこれまで様々な分野への提案を行ってきましたが、それでもまだまだ未踏の分野があります。
未踏の分野にいかに一歩踏み出すか。新しい市場分野=高付加価値帯に向けて機能開発することで、高収益製品へのバージョンアップを推進してきました。
社会や産業界のトレンドを読み、いかに製品開発するか。それがテーマです。
――具体的には?
例えば自動車がガソリン車から電気自動車に移り変わっていく大きなトレンド変化は見逃せません。
何に使えるか、どう提案するかを想像(創造)し、開発にチャレンジするのは、まるで宝探しみたいにワクワクして楽しいです!
他にも、自分の手で「Hi-pearl」「ART PEARL」「ART RESIN」「PARACRON」「ART CURE」に続く第6の製品群を開発してやろうという野望も持っています!
――今後の戦略は?
新しく開発した製品も、すぐにコモディティ化し市場価値は下落していく。コモディティ化すると、大手化学メーカーとの競合になり、収益性は低下してくる。
根上工業が狙うのは、まだ誰もが手がけていない未踏の分野。競争相手のいないブルーオーシャンを技術の力で拓いていく。そんなイノベーション型企業として、これからも研究開発に力を注いでいきます。